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皇帝の夢(その1)

皇帝は即位して15年間、人民から天子と仰がれるのに気をよくし、うまいものを食い、みたいものを見、聞きたいものを聞いて楽しみにふけった。その結果、健康をそこない、心のバランスをくずしてしまった。そこで次の15年間、皇帝は政治に心をくだき、ありったけの知恵をしぼって人民のためにつくした。皇帝はためいきをついた。「ああ、どうやってもだめだ。以前はわたし個人の楽しみを求めてやつれた。こんどは民の幸福のためにつくして、やはりこの始末だ」。そこで政治をすて、宮殿をすて、おともを廃し、食事も質素なものにした。
(参考:奥平卓・大村益夫訳「老子・列子」):徳間書店

皇帝の夢(その2)

皇帝は、宮殿の庭の片すみにいおりを結び、身も心もきよめ、三月(みつき)というもの、政治から離れてみた。ある日、皇帝は昼寝の夢に華胥(かしょ)の国へ行った。その国には支配者がおらず、国全体が自然のままにおかれている。人びとは欲望をもたず、なにごとも自然にまかせている。生に執着もしなければ死をおそれない。だから若死にする者がいない。わが身かわいさに他人をおしのけることもないから、愛憎もうまれない。人を裏切ったり、へつらったりすることがないから、利害というものもない。
(参考:奥平卓・大村益夫訳「老子・列子」):徳間書店