• 古典に学ぶ
    Classics

皇帝の夢(その3)

皇帝の昼寝の夢は続く。好きだから嫌いだからとかいった風情は誰ももたない。水のなかでもおぼれないし、火のなかでも熱くない。切ってもたたいてもけがをしない。美醜にも心を乱されない。山や谷を歩いてもつまずかない。自由自在なのである。皇帝は目がさめて、ハッとさとった。三月(みつき)の間、身も心もきよめて、修業をつみ、よい政治を考えぬいてきたが、その方法をつかめなった。だが今つかれてねむり、夢で華胥(かしょ)の国へ行ってきた。ほんとうの道は、あらゆる欲望をすてないと得られないということがわかった。わたしはそれをつかんだのだ。
(参考:奥平卓・大村益夫訳「老子・列子」):徳間書店

ユートピア

はるか遠くの島に列如(れつこ)射(せ)という山がある。その上には神人がいる。風を吸い、露を飲んでいるだけで穀物は一つぶも口にしない。深い泉のような心と、乙女のような姿。神人はとりたててだれを可愛がるでもない。臣下は仙人と聖人である。民をおどしたりいじめたりしない。つかえる人は誠実そのもの。民は施しも恵みも受けずに満ち足りた生活を送っている。たくわえはないが不足もない。病気もなく、若死にもなく、鬼神のたたりもここにはない。
(参考:奥平卓・大村益夫訳「老子・列子」):徳間書店