• 古典に学ぶ
    Classics

夢と現実 その1

鄭の国の話。ある男が山でたきぎをとっていた。そこへ何をおどろいたか鹿が一頭とびだした。 男は、これをうち倒した。人に見られてはと、あわてて水のかれた池にかくし、上に草をかぶせておいた。 ところがうれしさのあまり、かくし場所を忘れてしまい、とうとう夢だったことにしてしまった。 道々ブツブツひとりごとをいいながら家に帰った。
(参考:奥平卓・大村益夫訳「老子・列子」):徳間書店

夢と現実 その2

ところでそのひとりごとをきいていた男がいた。男は耳にしたことばを手がかりに鹿をみつけ、わが家にもちかえって妻にいった。 「さっき、たきぎとりが夢で鹿をとりながら、かくした場所を忘れたのを、おれがさがしてとってきた。あの男は正夢をみたんだな」。 妻はいった。「あんたこそ、たきぎとりが鹿をとった夢をみたのでしょう。この辺にそんな男はいないわ。今はほんとうに鹿を手にいれたんだから、あんたが正夢をみたのよ」「とにかく鹿を手にいれたのだから、どっちが夢をみたにしてもおなじことさ」
(参考:奥平卓・大村益夫訳「老子・列子」):徳間書店