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夢と現実 その3

さて、たきぎとりは家に帰ったものの、鹿が思いきれない。その夜、夢で自分がかくした場所と、またそれをもっていった男のことを知った。 翌朝、その夢をたよりにたずねて、すったもんだの争いの末、とうとうこの一件を法廷にもちこんだ。 裁判官は男にいった。「お前ははじめ実際に鹿を手にいれながら、かってに夢だといい、こんどは夢で鹿をみつけては、現実だなどといっている。被告の方は現におまえの鹿を手に入れてお前と争っているわけだが、被告の妻の話では、被告は夢で鹿のありかを知ったのであり、お前の鹿をとったのではないという。何が何だかわからんが、とにかくここに鹿があるのだから、半分ずつわけておけ」
(参考:奥平卓・大村益夫訳「老子・列子」):徳間書店

夢と現実 その4

この件が鄭の国王の耳にはいると、国王は、「裁判官もまた夢のなかで鹿をわけたのではないか」と大臣にたずねた。 大臣は答えた。「夢か夢でないかはわたしにはわかりません。それがわかるのは、黄帝と孔子くらいでしょう。いまは黄帝も孔子もこの世におりませんから、誰にもわかりません。まあ、裁判官の判決どおりにしておいてよろしいかと思います」
(参考:奥平卓・大村益夫訳「老子・列子」):徳間書店